瀬音の森日記 96
秩父イワナの採卵
1999. 11. 28
11月28日(日)荒川水系渓流保存会んお秩父イワナ採卵の日だ。昨夜は小菅村漁協
の忘年会に出席して、そのまま宿泊してしまったので、小菅から秩父に朝の道を走る。
飯能からの沿道では村の人が総出で道の清掃をしている。一斉清掃の日なのだろう。道
路に出ている人が多いので、徐行してゆっくり走る。こうして定期的に道路を掃除しな
ければいけないくらいゴミが多いのだろう。つくづくマナーの低下を考えさせられる。
芦ヶ久保のセブンイレブンで休憩していたら、車の窓から覗き込む人影があった。誰だ
ろうかと思ったら、何と秩父演習林のO村さんだった。大村さんは保存会の会員になっ
て今日が初めての作業参加なのだ。ちょうど良かったので一緒に山の池に向かう。
山の池にはすでに須崎会長や新井さんも来ていて、いろいろと段取りをしていた。関口
さん、加藤さんもやってきた。少ししてJICKYさん安谷さんもやってきた。都合11人
の会員が集まって、秩父イワナの採卵を手伝う事になった。
まず、イワナを池からすくい上げて生け簀に移し、オス・メスに分ける。池のヘドロを
取り除く事が出来なかった為にかなり臭う池での作業になった。30センチに余る大き
さに育った秩父イワナは、泥を跳ね上げながら手網の中で大暴れする。「おいおい、少
しは静かにしてろよー」と声をかけるが、おとなしくなるはずもない。
すでに冬の様子を見せる川の水は冷たい。手がかじかんでくる。ウエーダーからは水の
冷たさが膝にジンジンと伝わってくる。池の中の長時間作業がつらいので、交代しなが
ら作業する。結局オスが24尾、メスが19尾のイワナがいた。ところが、このイワナ
の様子がおかしい。メスが抱卵していないのだ。卵を持っているらしいのはいるのだが
産卵出来そうな個体がない。
これはおかしい・・・みんなが口々に何故なのか?と話し出す。すでに池で産卵してし
まったのではないか?産卵しないで卵を再吸収してしまったのではないか?産卵時期が
もっと早い時期だったのではなかったのか?・・・すべて憶測だが、目の前の魚には卵
がないのだから仕方がない。
オスの方も放精出来そうな個体がない。狐につままれた様だった。先月、ヤマメの採卵
の時に触った沢山の卵はいったいどこに行ってしまったのか???とにかく、結論とし
て今日の採卵が出来なくなった事は間違いない。何だか納得できないけれど、生け簀か
ら池にイワナを戻した。イワナについては初めての経験なので、こうした問題が出てく
るのだろう。採卵は来年を目指す事になった。
その後、川からの導水管の修理を全員でやった。ヒューム管の継ぎ口が古くなって、水
漏れしている箇所を新しく継ぎ直す作業だ。新井さんが指揮をして、それを一つ一つ修
理していく。これから冬になり川の水が減る。それでも小屋の中には発眼卵が生きてい
るから水の流れを絶やす事は出来ない。こうした修理に手を抜くと、一年間の苦労が水
の泡となるのだ。水が途絶えれば発眼卵も池のイワナも稚魚も全て死ぬ。
本当に毎回の気配りと手配りに頭が下がる。遠くにいて、こういう時だけ参加して、さ
も自分たちでやったような顔をしているが、毎週山の池に通って卵や稚魚の様子を確認
している須崎会長・新井さん・関口さん・加藤さんには頭が上がらない。
昼過ぎに作業は終了した。新井さん大村さん安谷さんJICKYさんと5人で場所を移して
昼食を食べながら秩父イワナの今後の話をした。大村さんから奥沢のイワナをどうした
ら保護出来るだろうか?という問いかけと提案があり、それについて皆で話し合った。
この件については後日改めて詳細を書きたい。
秩父イワナについての議論はこれからも長く続けなければいけない。秩父イワナを守り
育てるために我々に何が出来るのか?荒川水系渓流保存会として何が出来るのか?そし
て、瀬音の森・秩父として何が出来るのか?真剣に考えなければいけない。もしかする
と、瀬音の森・秩父の存在意義に関わる問題になるかもしれない。
大きな課題を与えられて・・・・あとはまた明日から。